いま厚労省の検討会(「社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援のあり方に関する検討会」)で、無料低額宿泊所の新たな基準がつくられようとしています。


社会福祉法で「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」と位置付けられている無料低額宿泊所。県への届け出をすることになっていますが、国の指針(ガイドライン)はあるものの法的拘束力はありません(自治体で独自の条例によって基準を定めているところはあります)。


無料低額宿泊所のなかには「貧困ビジネス」と言われるような劣悪な環境を利用者に強いているところもあります。最低基準をつくるにあたってはそうした劣悪な宿泊所を排除するために、①事前届け出制を導入するとともに、②現在ガイドラインで定めている設備・運営に関する基準を創設し、③最低基準を満たさない事業所に対する改善命令も創設するとしています。最低基準を満たす無料低額宿泊所は「社会福祉住居施設」となります。


また新たに「単独での居住が困難な生活保護受給者」に対し、必要な日常生活上の支援を提供する仕組みを創設するとして、福祉事務所が支援を事業所に委託する仕組みがつくられます(日常生活支援住居施設)。


こうした基準をつくることは必要なことだと思いますが、問題は本当に利用者の立場に立った基準をつくれるのかということです。千葉県弁護士会は11月20日、「検討会」についての会長声明を発表し、無料低額宿泊所の基準について「現行ガイドラインでは、居室は原則として個室とする点は良いとしても、居室の面積は7.43㎡(4畳半相当)と相当狭く、さらには例外として1人当たり4.95㎡(3畳相当)と、すなわち相部屋でも3畳確保すれば許されるなど、住宅セーフティネット法の基準と比較すると明らかに低水準」「(厚労省の資料によれば)一つの居室をベニヤ板等で区切ったいわゆる『簡易個室』も一定数存在することを容認するかのようである」と指摘し、「設備やサービスに比して著しく高額な利用料を徴収するという貧困ビジネスがこれまでまかり通ってきたのであり、それを容認するとすれば、決して許されない」と警鐘を鳴らしています。


問題は、今回の検討会のメンバーに「簡易個室」などによって大規模に生活保護受給者を囲い込み、「貧困ビジネス」と指摘されてきた事業者の代表が入っていることです。これで本当に利用者の立場に立った基準がつくれるのか疑問です。


事業者のなかには、社会福祉士など福祉専門職が定期的にアパートなどに居住する利用者を巡回し、生活支援を行うなどきめ細かな支援を行っているところもあります。そうした事業者の施設は定員も数人程度ですが、こうした施設がきちんと基準のなかに位置づけられるのかも問われています。


12月17日の検討会で最低基準について議論がなされることになっています。千葉県でも過去、劣悪な無料低額宿泊所が問題になってきました。12月18日の千葉県議会・健康福祉常任委員会でも取り上げたいと思います。