千葉県議会決算審査特別委員会5日目。今日は病院局、総合企画部、労働委員会事務局の審査が行われました。



○病院局
医師不足などによって患者数が減少し、昨年度14億円余りの純損失と4年連続の赤字決算となった病院事業会計。昨年度はそうした状況にさらに拍車をかけるような混乱がもたらされました。昨年11月、市原市の県循環器病センターについて突如「あり方検討」を行うという方針が出され、救急医療センターと精神科医療センターを統合して千葉市美浜区に新たに開設する(仮称)総合救急災害医療センター(当初は2021年度末完成予定)に循環器病センターも統合することを前提にされました。


本来であれば昨年度に予定されていた新病院の基本設計も一時中止となりましたが、乱暴な計画に市原市や周辺市町村、何より住民のみなさんが怒りの声をあげ、結果として循環器病センターの新病院への統合方針は事実上撤回され、新病院の基本設計も今年7月に再開されました。


しかしそのことによって新病院の開設時期は一年先送りとなり、基本設計に伴う病院の運用支援業務委託も二度に渡る契約変更を余儀なくされるなど混乱に次ぐ混乱となりました。昨年度予算については「事故繰越」として今年度に繰り越されましたが、事故繰越は「避け難い事故のため年度内に支払い義務が生じなかったもの」であり、今回のケースには当てはまりません。繰越計算書の説明欄には「委託業務の遅延」などと書かれていますが、県が無理やり遅らせたわけであって業者が遅れたのではありません。これらの点を厳しく指摘しました。


一方、医師不足は医師の労働条件にも大きな影響を及ぼしています。昨年度、月に80時間以上の残業をした「過労死ライン」越えの医師は県立6病院あわせて27人もいました。さらに1ヶ月の最長の残業時間は179時間と過労死ラインの2倍以上、年間の最長残業時間は1521時間にも上ることが明らかになりました。これらはいずれも循環器病センターの医師でした。


循環器病センターでは昨年来、脳卒中担当医師の異動が相次ぎ、昨年4月と今年4月を比べると脳神経外科の医師は7人から3人に激減。一時は脳卒中救急患者の時間外受け入れが一切できなくなりました。今年7月から週2日だけ時間外の受け入れを再開しましたが、それは現場の医師のあまりにも異常な長時間労働に支えられてのものでした。


循環器病センターの村山センター長からも「自分自身も具体的な数字は知らなかったが、患者の最後の砦として懸命に取り組んできたものの結果として職員に負担をかける状況になっているのは事実。病院局とともに医師確保に全力で取り組みたい」という答弁がありましたが、県として抜本的な手立てを取ることが必要です。その前提となるのは「県が行うのは高度専門医療であり地域医療は市町村など地域で担う」という県保健医療計画を撤回し、いまある県立病院を将来に渡って維持・拡充する方針に転換することです。


また保険適用外を含む腹腔鏡下手術によって11人もの死亡事故を生んでしまったがんセンターについても、改革の進捗状況について聞きました。各県立病院の医療事故は昨年度合計で7400件、一昨年度の7622件からは減少しているものの、より重大な影響のあったアクシデント(レベル3b以上)の件数は90件と一昨年度(86件)よりも増加。特にそのうち半分以上はがんセンターであり、アクシデントの件数は一昨年度の45件から昨年度67件へと1.5倍に増えています。


様々な努力が行われているものの、依然として重大な医療事故を起こすリスクがあると言わなければなりません。実際、昨年度の医療安全監査委員会の包括公表でも調査の結果、病院側の医療行為が原因となって死亡が認められた事例がありました(事例そのものは未公表)。


病院局は昨年3月より医療安全に関わる職員等からの独自の内部通報制度を創設しました。すでに退職していても在職当時の事案について通報することができ、窓口は病院局と外部調査員のどちらでも受け付けるなどの工夫がされていることは良いことですが、昨年度の通報件数はゼロ。より使いやすい制度にするために、たとえば決められた様式で書面で行う必要がある外部調査員への通報について簡素化することや、原則は実名での通報となっているが匿名でも受け付ける場合があることを周知するなどさらなる改善を求めました。県も「監査委員会などで検討してよりよい制度にしていけるよう改善を図りたい」と答えました。



○総合企画部
総合企画部では県内JR駅で進む駅員早朝無人化への対応について、オスプレイの暫定配備を巡る状況について、男女共同参画計画の進捗状況について聞きました。


地元・花見川区の新検見川駅や幕張本郷駅をはじめ、この間県内のJR各駅で朝6時半前後まで駅遠隔操作システムを使用した駅員無人化が進められています。なかには一日の乗車人数が3万人を超えるような駅もあり、あわせて21駅に上ります。


県は「市町村からの要望を受けて、駅員の減員があってもJRに安全性・利便性を確保するよう要望している」と言いますが、早朝時間帯の駅員の再配置は直接求めていません。しかしたとえば市川市議会では、市が「駅無人化の実施に伴い、車椅子御利用の方や視覚障がいをお持ちの方など、バリアフリー対応が不十分になる場合が考えられます。また、事件、事故への対応のおくれにより被害が拡大する場合も考えられますことから、利用者における利便性・安全性の低下を招き、駅としての必要な機能が損なわれるおそれがある」とはっきり答弁しています。この声を直接届け、JRに駅員再配置を求めるべきではないでしょうか。


埼玉県でも同じように早朝時間帯の駅員無人化が進められていますが、埼玉県は「早朝時間帯の駅係員の再配置」をJRに具体的に求めています。県議会でも同様に答弁しています。千葉県はJRに何を遠慮しているのか非常に弱腰です。


JR東日本は駅員無人化の理由を「経営合理化のため」だとしています。報道ではなかなか思うように人員が集まらないということも指摘されていますが、JRはこの間各駅の業務を子会社に委託するなど駅員の処遇を後退させてきました。JR東日本の昨年度期末決算は増収増益で過去最高を更新しています。必要な人員を配置するための資金は十分にあります。こうしたことも踏まえて強く迫るべきです。


オスプレイの問題では昨年来、木更津への暫定配備が取り沙汰されていますが、県としてまったく国いいなりの姿勢であることを指摘しました。3月にマスコミでいっせいに木更津への自衛隊オスプレイ暫定配備が報道されたものの、県は「防衛省に問い合わせたら、何ら決定していないとのことだった」という答弁を繰り返し、それ以上何も追及しようとしません。


決定していないのは事実だとしても、木更津が候補地の一つとして調整されているのかも、9月に報道されたようにこの秋のオスプレイ納入が延期されたということについても、防衛省は県に対して一切明らかにしていません。ここまで繰り返し報道されているのに「何ら決定されていない」という一言で済ますわけにはいきません。県として真偽を明らかにさせるべきです。


同時にオスプレイの安全性の根拠については、県は「国が安全性を確認している」という答弁を繰り返していますがこれも許されないものです。沖縄県は昨年9月に出された名護市沖合でのオスプレイ墜落事故の調査報告書について、「意見や勧告が非公開とされるなど、事故原因の究明や再発防止策の検討が十分に行われたか確認できず、納得できる内容とは言えません」と知事公室長が議会で答弁しています。


そのうえで昨年9月末時点でオスプレイの重大事故率が配備当時の1.7倍に上昇するなど県民の不安が高まるなかで、あらためて沖縄県としてオスプレイの配備撤回を求める考えを表明しています。県民の命と安全に責任を持つ立場なら当然のことですが、千葉県にはまったくその姿勢がありません。根本から姿勢を改めるべきです。


決算審査特別委員会は明後日7日が最終日。水道局、教育庁、出納局の審査が行われます。長丁場の委員会もいよいよ最終盤です。